火星のブルーベリー
前回に続き、火星ネタ(?)です。
2004年NASAの火星探査機オポチュニティが火星に着陸し、探査を行なった。何と2004年から2018年まで14年間の長期間に渡って活動。最後は太陽電池による充電が上手くいかず通信が途絶えた。
火星の崖。地球上のどこか乾燥した地域でもありそうな風景。
火星に転がっている3〜5ミリ程度のサイズの揃った石。ブルーベリー等と呼ばれている。
実はこの小さな石と似た石が地球上にある。ユタ州のMoqui Marbleだ。
地学と生物学が融合した生物地質学や地質微生物学が今熱い学問で、賛否分かれながら研究が進んでいる分野です。マルコ先生の三冊目の著書も生物地質学の最近の成果をベースにしている。今まで地学的に形成されとされてきたが実は生物が関与したと考えられる石の種類が増えている。
ユタ州産Moqui Marbleの形成機構は二段階。第一段階は硫黄還元型バクテリアのコロニーが球状に成長し、第二段階は球表面に付着した鉄酸化型バクテリアが内側に向かってコロニー形成する。それで見た目黒い酸化鉄で覆われている石ができる。
賛否分かれるものの、火星のブルーベリーは微生物コロニーの痕跡と認識している生物地質学者もいる。
微生物の成長には水が不可欠だが、43億年前の火星は2割が海と水が豊富だった。ただ38億年前に火星から磁場が消え、太陽風にさらされることで急激に水が失われた。つまり火星の微生物コロニー(ブルーベリー)は今から38億年以前に形成された可能性が高い。
一方、地球もほぼ同時期の約38億年前に生物が誕生している。学者によると、隣接する惑星に同時期に生命が誕生したのは統計的にあり得ず、一方の惑星に誕生した生命がもう一方の惑星に移ったと考える方が合理的だとか。太陽の引力を考えると地球由来の隕石が火星に到達することはあり得ない。火星の隕石が地球に来ているのは昨日のブログで紹介した通り。地球の生命が火星の生命の起源にはなり得ず、火星の生命が地球の生命の起源ということになる。
仮に微生物を含む隕石が地球に辿り着くとき最も障害になるのが大気圏突入時の加熱。小さな隕石では微生物が死滅してしまう。火星には惑星半径の半分にも及ぶ巨大な隕石孔Vastitas Borealis craterがあり、この隕石落下時には十分大きな塊が火星を飛び出したと言われている。
2つの元素(ボロンとモリブデン)がRNA誕生に必要だが、原始地球にはなく、一方で原始火星には恐らく存在していたと言われている。RNAは遺伝的複製に使われる生命の必須要素だ。また原始生命誕生には、水に溶けたリン酸が、有機物、DNA、RNA、タンパク質形成に必要だが、これも原始地球には不足していたが、火星上には質・濃度共により適したリン酸が存在していたとされる。
地球上の石が生物起因か研究することで、地球外生命の痕跡に迫ることにもつながる。魅力的な生物地質学の紹介でした。