海洋性ジャスパー:深海で生まれた鉱物
こんにちは、azrocksです。
「石の科学」シリーズの第2回目として、海洋性ジャスパーにスポットを当てたいと思います。このジャスパーは海の深淵を起源とし、長い時間を経てわたしたちのもとにやってきました。この記事では、海洋性ジャスパーがどのように形成されるのか、その種類、地質学的な価値を探っていきます。
海洋性ジャスパーの形成
川が海に砂利や泥を運ぶと、砂や礫などの粗い粒子は海岸沿いに堆積します。粘土や泥岩のような細かい粒子は、海岸から離れた海底に沈んでいきます。海岸からさらに遠い場所では大陸からの物質が届かないため、海中の微生物だけが堆積します。海洋性ジャスパーはこの微生物を原料として形成されたものです。
微生物とシリカ
海洋性ジャスパーの主要な成分は、冷たい水域に生息する珪藻(一種の植物プランクトン)や、熱帯海域に生息する放散虫(一種の動物プランクトン)のシリカ質の殻です。これらの微生物の殻が海底に積み重なり、長い時間をかけて固まることで、海洋性ジャスパーが形成されます。また海嶺の火山活動に伴う噴気孔が海中に大量のシリカを排出し、その周囲でシリカ質の殻を持つ生物が繁殖したり、バクテリアがシリカゲルの沈殿を促進したりすることも、海洋性ジャスパー形成の一因になります。
炭酸塩補償深度(CCD)とその役割
興味深いことに、炭酸塩補償深度(CCD)と呼ばれる特定の深さ(約5000m)以下では、炭酸カルシウムが溶解しやすくなりますが、シリカはそのまま残ります。これにより、CCD以下の深海底では、シリカ質の殻だけが堆積し、炭酸塩やその他有機物は全て海水に溶けてしまいます。このことは、なぜ海洋性ジャスパーが特定の深海環境でしか形成されないのかを説明してくれます。
海洋性ジャスパーの種類
海洋性ジャスパーは3種類に分類されます。1)炭酸塩補償深度よりやや浅い海底で形成され、若干有機物を含むフリントやチャート、2)炭酸塩補償深度より深い海底で形成される深海ジャスパー、3)35~15億年前に海底で形成された縞状鉄鉱床(BIF)です。その中でも深海ジャスパーは全ジャスパー産出量の大部分を占め、世界各地で見つかる赤色のジャスパーです。
地質学的・文化的重要性
海洋性ジャスパーは美しいだけでなく、過去の海洋環境やプランクトンの種類・分布、さらに地球の気候変動の歴史を解き明かす地質学的な手がかりを提供してくれます。文化的には、古代より装飾品や工芸品として用いられてきました。
最後に
地球の歴史は、形成された数々の鉱物によって語られます。何億年もの時間をかけて海底で形成された海洋性ジャスパーが、地球のプレートテクトニクスの動きによってゆっくりと地表へと移動し、最終的には私たちの手元に届いたことを考えると、自然の雄大さと地球の不思議を感じさせてくれます。海洋性ジャスパーをルーペで覗くとまれにプランクトンの痕跡が残っていることもあるらしいですよ。